【人間関係のリノベーション】ギャラリースナック「ちんぷん館TOKYO」が提供するSNS時代の交流場所とは?

SNS全盛の時代に来る次の波は「SGP」

SGPはSocial gathering placeの略称で、直訳すると「社交場」という意味になります。

デジタルなコミュニケーションが発達している時代だからこそ、顔が見える交流や表情のある肉声が交わされる場所が大きな価値を持ちます。忙しい現代人の社交場はドレスやタキシードなどの装いを必要とするものではないし、着飾ったインスタを経由するものでもありません。等身大で普段着な自分を見せる場所こそが求められているのです。

現代の社交場はリアルの場所に移行しつつあるのかも知れません。

清澄白河のギャラリースナック「ちんぷん館TOKYO」はSocial gathering place(SGP)として、多様な出会いや交流機会をオープンに提供し、私たちの生活や未来に新しい風を送り込んでくれる、SNS時代の新しい交流場所です。

「ちんぷん館TOKYO」共同オーナーの河野慎平さん@1階のスナックコーナー


清澄白河

台風18号が東京を暴風域にしていた2017年9月17日夜。東京・清澄白河駅を降りると斜め横から来る雨が地面を強く打ち付けていました。しかし徒歩5分の場所にある「ちんぷん館TOKYO」店内は熱帯低気圧のような空気に包まれていました。

スナックフロアとなっている1階カウンターの中ではこの日担当の「1日ママ」が忙しそうに動き、カウンターの外には2重3重にも人が重なって、それほど広くない店内は満員で大盛り上がり。知らない人がこの場所を見ればどこの人気店だ?と興味が沸いてくることでしょう。

撮影日:2017年9月22日


今回訪問したのは「ちんぷん館TOKYO」というギャラリースナック。共同オーナーの1人、河野慎平さんにお話を聞いてきました。お話しは2階に上がった小上がりの畳の部屋で。時折漏れ聞こえる1階からの賑やかなお客さんたちの声とは対照的に、河野さんの柔和な語り口が2階フロアに心地良く響きながら進みました。

河野慎平さん
今日はとっても盛り上がってますね(笑)。1日店長は2回目となる30代のOLさんがママなんです。彼女とは別のイベントで知り合ってからこの場所にお誘いして実現しました。

河野慎平さん

共同オーナーとして「ちんぷん館TOKYO」を運営する河野慎平さんは大学で建築学を学んだ後、不動産会社で10年間働き、その後リノベーション会社に移り数年後に独立された経歴を持つ方です。イベントの事務局仕事を重ねながら、現在は独立後3年が経過しており、「ちんぷん館TOKYO」は2017年になって本格稼働している取組みです。


会社員時代には週末の時間を使ってボランティア活動に従事し、主に活動の場としていた「世田谷ものづくり学校」に出入りする中で、会社外でのネットワークを広げていきます。その後、三宿四二〇商店会の事務局を担当し、2011年スタートしたイベント「世田谷パン祭り」に関わっています。

「世田谷ものづくり学校」・・・

廃校となった旧池尻中学校舎を再生し、2004年10月に完成した複合施設。ものづくり事業者へのオフィス提供・創業支援・ものづくり体験と交流の場の提供・スペースレンタル・地域コミュニティとの連携などを担う世田谷区と民間企業の取り組み。

 

「世田谷パン祭り」・・・

年に1度世田谷で開催される「パンを楽しむお祭り」。世田谷からはもちろん、全国から美味しいパン屋さん、そしてパンを愛する人たちがたくさん集まるイベント。美味しいパンの紹介にとどまらず、パンにまつわる様々な情報、文化を発信していくこともこのイベントの大きな魅力。毎年行列ができるほどの人気を誇り、2017年は7回目を迎え、10月8日〜9日の2日間開催されます。

「世田谷パン祭り」の初年度は東北大震災直後の2011年10月。自粛ムードの漂う世間の風を感じながらスタートします。苦労を重ねながら多数の出店社をまとめ上げ、今では来場者が多く詰めかける大きなイベントに成長しています。
河野慎平さん
三宿四二〇商店会の小さなイベントをお手伝いしていましたが、パン祭りは初年度から大盛況でした。ここでの成功体験が少なからず現在に繋がっていると思っています。
「世田谷パン祭り」で立ち上げから運営に携わり、街や地域、商店会の活性化というミッションに取組み、結果として多くの集客を成し遂げたことが成功体験として残ることとなりました。イベントに関わる人々の喜びをサポートしてきたことは、会社員の仕事とは違った大きな達成感になりました。これが1つの転換期となって現在の活動に繋がっています。それと同時に交流関係の輪も大きくなり、経済的にも好転していく中で、徐々に独立・起業へと想いが傾いていきます。
河野慎平さん
ボランティアという立場で動いている期間もあったのですが、ボランティアがいて成り立つイベントだと不安定な組織だし、取組として持続的に動いていかないのでは?という疑問を感じ、社会的な価値を生む取組を行うこと、それを経済的に自立するものにすること、その両方を兼ね備えていきたかったんです。
パン祭りは2年目以降もさらに拡大していきますが、イベントの成功をきっかけに、自身の将来進む方向に少しずつ違う道を見つけて行くことになっていきます。

河野さん自身、働きながら週末に活動することに限界を感じ、10年以上続けた会社員を卒業し、仲間と独立することを決断します。

東東京

独立後は関わるプロジェクトをさらに増やしていく河野さん。それまで世田谷は三宿を拠点に動いていましたが、知人の誘いをきっかけに一転して「東東京」を活動の場の1つに選んでいきます。河野さんの周辺にはたくさんの案件が転がっているような印象も受けますが、東東京のコアとなるプロジェクト「イッサイガッサイ」への参加もまさにそれ。今までのキャリアの中で培ったネットワークがあったからこその出来事でした。

「イッサイガッサイ」・・・

Eastside Goodside (イッサイガッサイ) 東東京モノづくりHUBと名称され、東京都が支援する取組です。「CREATION IN EAST-TOKYO」を合言葉に、モノづくりが盛んな東東京の「ヒト」と「モノ」と「バ」をつなげて創業者をサポートし、東東京をワクワクする地域に変える創業支援ネットワークです。

イッサイガッサイ関連イベントの1コマ。この日は深川地区で観光客向けのサービスを行っている「Treck Treck」代表のプレゼン。


河野慎平さん
リノベーションの仕事をしていた時から東東京が盛り上がっていることを目の当たりにしていて、以前より注目していました。ちんぷん館だけでなく、現在は「イッサイガッサイ」という東東京で創業する人を応援するプロジェクトに運営として携わっています。

ギャラリースナック

河野さんが推進するもう一つの東東京を拠点とした活動が、ギャラリースナック「ちんぷん館TOKYO」です。

「ちんぷん館TOKYO」は1日15,000円(税別)で借りられるレンタルスペースとして運営されています。昭和の時代から続くスナックを、引退されたご夫婦から2階の住居部分も含めて借り、大規模にリノベーションしました。

インタビューの日は日曜日ということで、30代のOLさんが一日限りのママとなって切り盛りしていましたが、誰もが一日店長となってお店を経営する疑似体験ができるレンタルスペースです。

1人で好きなようにお店作りしても良いですし、グループで話し合いながら運営していくなど、様々な運営の方法がありそうです。また、ギャラリースナックという名の通り、1階のスナックコーナーだけでなく、2階もギャラリーとして使えるスペースになっていますので、ここを活用した企画なども大いに考えられるでしょう。美術ギャラリーが点在する清澄白河という場所ならではのアプローチもありそうです

畳の小上がりスペースはオーダー製作の木製テーブルも設置され、展示物を並べたり、物販などを行うことも可能です。


河野慎平さん
レンタル的な活用とは別に、オフィシャルイベントも展開しています。独自に企画したイベントを定期的に開催しています。今後の予定では寄席の開催や秋の味覚を楽しむカラオケ企画、複数クリエイターの合同展示会なども予定しています。イベント情報は公式サイトで確認してみて下さい。

リノベーション

リノベーションを辞書で引くと刷新、改修、修復、再生、と言う単語が出てきます。

河野さんへのインタビューを進めていくうちに、会社員時代の「リノベーション」というキーワードが徐々に強く浮かんでくることに気がつきました。

河野慎平さん
もともと仕事と生活のバランスに悩んでいた時期があって、それを打破したきっかけが、プロボノのように自分が本当にやりたいことをやっていた週末活動だったんです。同じような状況に直面している人がいたら、手をさしのべられる居心地が良い場所、認められる空間が用意できれば良いかなぁと。ちんぷん館はそういった場所を目指して作りました。

建物のリノベーションとは土台や柱はそのままに、間取りを変えたり設備を交換して新しい生活をはじめることですが、「人間関係をリノベーションする」という考え方をしてみると、「ちんぷん館TOKYO」という場所がその機能を果たしてくれるのかも知れません。

「ちんぷん館TOKYO」は人が集うリアルな場所を格安で提供し、人々が楽しい時間を過ごすことや、発信や対話の場所を作ることによって「地域や来場者の笑顔に繋げていくこと」へと向かっていくことになります。

 「一日店長」企画

代表的な活用方法「一日店長」について、簡単にまとめてみたいと思います。

1階のスナックコーナーは調理が可能な厨房スペースと10数名のお客さんが入れる滞在スペース。椅子を使った着席形式でもスタンディング形式でも対応が可能な構造です。音響やモニター設備も使用でき、音楽をBGMにした映像付きのカラオケや、ビデオの上映も可能です。

2階のフリースペースは小上がりの畳とテーブル3卓を活用してギャラリーのような使い方が可能です。テーブルの脚は折りたたんでフラットな形に可変出来ます。多様な活用シーンが考えられますから、店長の企画力が試される事になりそうですね。

一日店長企画の際の一コマ。


河野慎平さん
一日ママということで飲食メニューを開発する必要があります。来る人のことを考えておもてなしするわけですから、皆さんしっかりと考えてらっしゃいますね。結果として、ハレの日となる1日に「自分の価値を自由に提供できる=誰かに認められる」、と言う経験を広げていきたい想いがあります。それで自分も救われてきたので・・・。

また、備品として全国の陶器作家さんがつくった手仕事のぬくもりを感じる器が常備されています。共同オーナー者の関係で食器類が沢山ラインアップされていて、料理を一層華やかに飾ってくれるのです。自由に使って良いということですので、嬉しいポイントですね。

食器の一部です。まだまだ沢山用意されています。


河野慎平さん
みんなにママになる体験をして欲しいので、今の課題はママになる人を育てることです。

※「食品衛生責任管理者」を置いており、一般客を入れる営業も可能です。
※※現在は関係者の紹介が無いと借りられないシステムになっております→お問い合わせはこちら

最後に

イベントやプロジェクトを通じて人が集まると、その場から生まれる出会いの中で新しい自分を発見し、小さな行動に繋げていくことができる。そんなチャンスはたくさん転がっているのだと、河野さんの話を伺って感じました。

「ちんぷん館TOKYO」という場所を現代社会のストレス多き大人たちに提供し、その場所に集う人同士のコミュニケーションによってお互いに良い作用が起こることで、人々が豊かな生活を送っていける。そんなことを期待してしまいます。

SNSが似たような趣味や興味関心事をネットワークのベースにしているとしたら、「ちんぷん館TOKYO」というSocial gathering place(SGP)は人脈形成や自分の中にない事象へのアプローチに繋がっていく可能性があります。新たな関係性の構築が図れるという意味で、SNS全盛期の現代だからこそ意味や価値のある場所になるのかも知れません。

もしかしたら皆さんの人生が「ちんぷん館TOKYO」をきっかけに変化していくかも知れませんね。

ギャラリースナック「ちんぷん館TOKYO」

概要

住所:135-0024 東京都江東区清澄2丁目5−3(清澄白河駅徒歩5分)
営業時間:イベント単位で異なります。
公式サイト:こちら